コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

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トライアンギュレーション訓練(パート4)

トライアンギュレーション訓練最終回の今回はこの訓練を利用する事によって、どの様に私のカッピングスキルが良くなっていったかについて書きます。

先ずはハイトーン、ロートーンの区分け

 

トライアンギュレーション訓練を始めた当初は甘さや酸味の区別、またそれらの要素間が乱れあった故の味覚への相互作用などに頭が混乱しての出発でした。いや、それどころか正直言うとカッピングを10年来行っていなかったので、レモンやら土やらシナモンやらと言った多くの香味の識別すら出来ない状態でした。とは言っても、10年前にどれだけそういう事が出来ていたかと聞かれると、それもあまり自信を持ってこんなに出来ていたんだ!とは言えませんが・・・。

それで、訓練を開始した頃は香りに関しては特にあまりはっきりと何の香りだ、と特定出来なかった為、これはハイトーン、或いはロートーンの香りだと言う風な特徴付けをするようにしていました。これはどういう事かと言うとハイトーンは軽い香り、言い方を変えれば花の様な弾む香りですが、フルーツでも柑橘類、桃、りんご、いちご等の明るい色のベリーに代表されます。それに対してロートーンはドシッとした重い香りですが、ダークチョコレート、糖蜜、ブルーベリー等のダークベリーに感じられるものです。

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コーヒーの香りを色とりどりにイメージ化したフレーバーホイール

 このハイトーンやロートーンと言う区分けでカップを区別出来る事もありますが、同じセットの3カップが全て同じトーンの時には十分ではありません。そこでこれを更に進化させたのが「香りの色付け」です。色でも軽い、明るい系統のものがあり、逆に重めで暗めのものもあります。このアイディアを活かすと例えば柑橘類は黄色やオレンジ、ダークチョコレートは黒と言った色付けに自然に行き着くのですが、これを利用してそれぞれのコーヒーの香りの区別をする訳です。

嗅覚の向上はより総合的なカッピングスキル向上

詳しくは次回以降の嗅覚訓練で取り上げますが、私は元々味覚の方が発達しており、嗅覚はあまり良いとは言えない方でした。それもあって前述のハイトーン、ロートーンの区分けから始めて、後に香りの色付けに移った所以です。逆に言えばカッピング訓練開始当初は大半の場合、より自信があった味覚のみを当てにしてトライアンギュレーションの違うカップを特定していました。

そう言う状況だったのですが訓練を重ねていくに連れ嗅覚が改善し、結果としてしばしばフラグランスとアロマの評価結果で正しい答えを導き出せる様になっていきました。

どれだけ嗅覚が良くなっていったかと言うと、 嗅覚と味覚の結果が違ったセットについて説明すると分かり易いと思います。この様に香り、味覚のそれぞれをベースにした答えが異なる場合、初めの頃は香りベースの答えが間違っている場合が大半で、味覚ベースの答えが合っている事の方が多かったです。しかし嗅覚が良くなるに連れ、当初はより自信があった味覚ベースの答えを選んだら誤答で、嗅覚ベースの答えが合っていたと言う事が多くなっていく程の改善でした。

(出典:エルサルバドルコーヒー審議会)

この様に嗅覚が鋭くなっていった事は総合的なカッピング力向上に繋がっていきました。と言うのもカッピングする際に味覚だけではなく、嗅覚に頼ることも出来るようになったからです。これは言い換えれば、評価する際の道具が増えた様なもののです。

嗅覚と味覚の評価結果一致へ

上記の様に、トライアンギュレーションで嗅覚と味覚の評価結果が一致しない事は特にトレーニング初期にはしばしばあります。逆に言えば順調にカッピング能力が上がっている事の一つの指標は、これらが一致する事です。さらに言えば、この双方の結果が一致すると言う事は、正しく異なるカップを選んでいる事が多いものです。

実際私もトレーニングを重ねるに連れ、評価結果が一致するケースが多くなり、それイコール正解ゲットの頻度も増えていきました。評価結果一致で正解を当てた時の快感度は並ではないものです。ゴルフに例えればホールインワン、野球だったらホームランと言ったところでしょうか。

愉快痛快、最高のスッキリ気分と言っても表現し切れない感触です。しかもそれを一回のトライアンギュレーション訓練で何セットか成し遂げた時は至福の想い、生きていて本当に良かった感満々です。

 

四記事にもわたってお届けした、当初より長くなったトライアンギュレーション訓練の紹介連載ですが、取り敢えずは今回で最終回です。次回のQグレーダー訓練紹介はルネデュカフェと言う道具を使った嗅覚訓練について綴ります。