コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

コーヒー鑑定士が産地から、超愛飲家・プロ向けにスペシャルティコーヒー事情や経験談を生中継!

MENU

コーヒー抽出法大会ジャッジに挑戦!(パート1)

 今回からはQグレーダーのお話を少し休んで数回にわたって、コーヒー抽出法大会に初めてジャッジとして参加させて頂いた時の経験について綴ります。どの様にしてジャッジとしての参加の招待に至ったか、話が少々曲折しますが紹介します。

Qグレーダーがもたらしてくれる機会

私が住んでいるのは人口約6百万人の中米のエルサルバドルなのですが、この国には私を含めてQグレーダーは18人しか居なく、希少な存在です。よってQグレーダー資格を取得すると自動的に、先輩のQグレーダーやカッパーの視線を引く事になります。

しかも私みたいに何処から現れたのか、アメリカへまで自費で渡って資格を取ってきた様なカッパーは特に珍しがられると思います。話に聞いたところではエルサルバドルの先輩Qグレーダーは皆エルサルバドル、或いは良くて隣国のグアテマラかホンジュラスで資格取得したのだから、言い方を変えれば変人的な存在かも知れませんが。

そんな背景の下、恐らく何処のコーヒー原産地にもあるのでしょうが、エルサルバドルにはASCAFEと称されるカッパー協会があり、ある日そこのカッピングセッションに招待されました。これもやはりQグレーダーになったあなたに、先輩カッパーをより幅広く知り、ASCAFE加盟を検討するために、とのオファーでした。エルサルバドルのコーヒー業界に携わっているより多くの方々を知り合いたいと願っていた私は、勿論有難く好意を引き受けました。

ASCAFEカッピング時の場面

なんとCOEトップ10をカッピング!

ASCAFEのカッピングセッションの開催場所は、Qグレーダーも数人勤務しているエルサルバドルコーヒー審議会のコーヒー研修目的に設置されたコーヒースクールでした。その日の日程は先ずは協会の諸事についての話し合いがあり、その中でQグレーダーを取得したばかりのカッパーとして私の紹介をして頂き、皆さんに温かい拍手をもって歓迎頂いたのはとてもうれしい思いでした。

カッピングのイントロ的な打ち合わせが終わり、その日カッピングするコーヒーの説明を聞くと、なんとその年のエルサルバドルのカップオブエクセレンス(COE)トップ10だと言う事を知り、多くの先輩カッパーとカッピングが出来る事だけでウキウキしていた私の心はより高く舞い上がりました。と言うのもCOEは後に入札で売るために、生産国ごとにその年の収穫の最高のコーヒーをカッピングで競い合う大会です。

COEに出品するコーヒーは、トップに入ると後に市場価格とは全く比べ物にならない位の高い値段で売れる為にどの農家もこれ以上無い程栽培と精製に入念な手入れをしており、最高級のコーヒーとなります。

COEトップ10の一つのコーヒーの詳細

聞いた話だと、その場に居たのは私を除いて皆誰もがASCAFEの会員であり、彼らですら多くがその年のトップ10のカッピングは無経験な方たちばかりでした。そこへ来て会員でもない私が招待されてエルサルバドルの最高のコーヒーをカッピングさせて頂けるのには、頭が上がらない程の有難み、またとても光栄に感じました。

カッピングと言うユートピアへの旅

そうして2台のカッピングテーブルのそれぞれに3カップセットで置かれた10のエルサルバドル最高級のコーヒーを前にして、私は嬉しさと共に緊張も覚えました。こんなに質の高いコーヒーを私がカッピングして消費してしまっても良いのか、と。

いや、だけどこれもカッピングの専門家であるQグレーダーとして自分には社会においてコーヒーの品質の認識、またその向上促進に貢献する重大な目的がある事を思い出しました。これを念頭に置くと、こう言った超高級豆のカッピングも必要不可欠な、いや中心的な活動の一環なのだと言う結論に至り、気を引き締めてカッピングに挑む心理的準備が出来ました。

10の高貴なコーヒーの香りと風味を 一つずつ鼻と口に含める度にその色気に圧倒され、時が止まる・・・。舞い込んでくる色とりどりの風味の魅力に酔わされる。その香ばしき、また美しき魅力にただただ絶句・・・。新たに知り合ったカッパーともその時、場所、機会を共にした幸せを満喫すべく、味わうコーヒーの感想を共有しあい、ユートピアに至ったかのような思いでいっぱいでした。

こうしてASCAFE会員との触れ合いは、コーヒーの質はもとより最初の打ち合わせからカッピングまで通じて同志カッパーの新メンバーを迎える親切さを感じ、感謝でいっぱいの日でした。

旧友そして「新」友

このASCAFE会議出席に関して最後に触れておきたいのは、人と人の繋がりの大切さです。と言うのもASCAFE会議とカッピングに招待して頂いたのは、彼自身Qグレーダーでもあるエルネスト・ベラスケスと言うコーヒー審議会の品質コントロール課長です。

彼は10年前に私が商社に勤めていた頃に様々なコーヒーの研修を受けた際に講師として多くを教えて下さった方でした。最近私がコーヒーとの関わりを深くするにつれて彼にお会いする機会が再び増えたのですが、実はサンフランシスコでのQグレーダー研修及び受験出発寸前にも訓練をお手伝い頂いたり、学習教材を貸して頂いたりととても親切にして頂きました。

エルネストとASCAFEカッピングにて

エルネストはいわゆる旧友ですが彼との訓練で知り合い、その後Qグレーダーになってからより知り合う機会が増えたのも、もう一人のコーヒー審議会のQグレーダーです。マヌエル・ビンデルと言う方ですが、彼は前述のコーヒースクール長であり、噂には名前を良く聞いていた方なので私もより知り合いたいと思っていたところにASCAFEでのカッピングでその機会が訪れ、私からはよりコーヒーに身を入れたい事などを話しました。

するとASCAFEとのカッピングの数日後にある案件を提案したいから話がしたいとテキストメッセージしてくれたので何の事かと彼にコンタクトすると、その週末に抽出法大会がありジャッジが必要なので引き受けてくれないか、という話でした。私からしたらカッピング経験を重ねるこれ以上ない機会なので、当然ながらそのまま喜んで引き受けたのです。

彼のその話で嬉しかったのは、ASCAFE会議で合った際にQグレーダー後の練習を重ねるためにカッピングの機会を増やしたいと言った私の思いを覚えていてくれ、ジャッジが必要だと確認した際に思い出してくれた事です。こうしてコーヒーの親友となっていく事を願う「新」友が誕生した訳です。

 

と、こんな感じで抽出法大会にジャッジとして参加出来ることが決まりました。次回からはこの大会についてご紹介します。