コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

コーヒー鑑定士が産地から、超愛飲家・プロ向けにスペシャルティコーヒー事情や経験談を生中継!

MENU

コーヒー抽出法大会ジャッジに挑戦!(パート2)

そういう事で抽出大会ジャッジに招待されたのですが、今回はこの大会がどの様に催されるものかについて語ります。

フアユアコーヒー抽出法大会について

「新友」となったマヌエル・ビンデルにジャッジとして招待してもらったのですが、参加させてもらったその抽出法大会と言うのはどういう形態のものかと言うと、バリスタが各自選んだ抽出方法でコーヒーを入れて競い合うものです。

この大会は中米エルサルバドル西部のコーヒー産地、フアユアで開催されたFestival con Aroma a Café(コーヒーの香りフェスティバル)の一環で第一回目のイベントでした。フアユアで開催された数日前に同じくエルサルバドル西部のコーヒー産地であるサンタ・アナで同様の大会が開催されたばかりでした。

f:id:drcoffee:20190813023333j:plain

サンタ・アナ抽出法大会でケメックスを使ってプレゼンをするバリスタ(出典:エルサルバドルコーヒー審議会)

コーヒー審議会が主催するこの様な大会の趣旨は国産コーヒーの消費の促進によって零細・小農家への支援をする事ですが、特にこの大会の場合は抽出技術の競争を通して使用改善の奨励が目的です。エルサルバドルを初めとする多くの中米産地は気候変動や国際市場価の長年の下落などのために、近年コーヒー農家の経済基盤が大いに脅かされています。

よって、この様な場でもQグレーダーとして役に立てるのはとても光栄であり、そう言う重要な役割がある事は任務遂行にあたって一層の励みとなります。

大会規定はWBrCをもとに

当然のことながら大会である限り規定があり、この抽出法大会においては基本的には世界レベルの標準とも言うべきワールド・ブリューワーズ・カップ(WBrC)と言う世界大会のルールを使っています。この世界大会は手動の器具を用いて抽出技術を競い合うイベントで、2011年から開催されています。多くの国々のチャンピオンが競い合うこの大会では日本人も何度か入賞しており、特に2016年にはワールドチャンピオンの座に輝いています。

WBrCには2つの競争形態があるのですが、フアユアの抽出法大会ではそのうちのオープン・サービスと称した競技方法に則ったものとなっています。オープン・サービスの意味するところは、抽出方法以外に豆とジャッジに出す器をバリスタが任意で選べる事です。

f:id:drcoffee:20190813023305j:plain

サンタ・アナ大会でV60を使って抽出するバリスタ(出典:エルサルバドルコーヒー審議会)

世界大会とは多少ルールが違う部分もありますが、参加者には一回限りの合計15分のラウンドが与えられます。そのうち、5分で器具や豆挽きなどを準備し、10分でジャッジに対するプレゼンテーションとバリスタ各自が選んだ方法で抽出を行い、それぞれのジャッジに一カップずつコーヒーを入れます。 評価基準は感覚とプレゼンテーションの双方です。

審査員は4人ですが、1人のヘッド・ジャッジがリーダー役です。ヘッドジャッジの役割は調整役の他に、参加バリスタがヘッドジャッジ以外のそれぞれのジャッジに一カップずつ与えるコーヒーの均一性を評価します。今回私が任されたのは3人のジャッジの一人としての参加でした。

WBrC指定カッピングフォーム

フアユアの抽出法大会では規定だけでなく審査フォームもWBrC使用のものを使います。 ヘッドジャッジとその他のジャッジの役割が違うためにフォームも異なるのですが、ご参考までに以下に3人のジャッジ用の審査フォームイメージを紹介します。このフォームについてはこの場においては敢えてあまり詳しくは説明しませんが、感覚評価に関しては多少の違いはあるもののSCA(スペシャルティーコーヒー協会)フォームにある評価事項と基本的に同じものが含まれています。

f:id:drcoffee:20190813015200j:plain

WBrC審査フォーム

もう少しだけ触れると感覚評価事項は7つですが、これはSCAフォームの10項目より少なくなっています。その3つの違いの根拠は、SCAフォーム使用時に評価する5つのカップに対して、WBrCで3人それぞれのジャッジが審査するカップは一つだけであるため、複数のカップがなければ評価出来ない3つの項目が除外されている為のものです。

この点について更に言及するとこのフォームで省かれている3項目のうち、少なくとも均一性に関してはジャッジ3人のカップを評価するヘッドジャッジの役割を反映しその評価フォームに取り組まれています。

プレゼンテーションに関して3人のジャッジが評価する点は、バリスタの風味説明がどれだけジャッジ自身の感覚評価と一致しているか、またカスタマーサービスについてです。カスタマーサービスは、バリスタがプレゼンテーションを通してどれだけカップの域を超えてコーヒーを飲む経験を更に豊かに出来るかが審査されます。

ーーーーーーーーー

 

個人的には大会前にここまで勉強すると少し緊張が解け、当日に向けての心構えの準備が出来ました。次回は当日のジャッジ経験について綴ります。