嗅覚訓練(1)
嗅覚訓練定番のルネデュカフェ
味覚には、人などの動物が体内に吸収する飲食物の毒性の有無を最終評価すると言う、とても重要な役割がある為、感度が大変発達しています。それに比べると人間の嗅覚能力は劣っていると言えるものの、香りと味が混じり合って感じられる風味においては香りがとても重要な位置を占めます。これを念頭に置くとしっかりした嗅覚訓練を行うことの重要度が明快に御理解いただけると思います。
Qグレーダー試験の嗅覚試験にはルネデュカフェと言うキットを使うので、それに慣れるため試験対策訓練も自然にこのキットを使うのがベスト、と言ったらむしろ軽んじた見方であり、使用は必須と見なすのが妥当です。
そこでこのルネデュカフェとは何かと言うと、フランス人のジャン・ルノワールという著名なワイン鑑定士が開発を指揮し1997年に発売された、コーヒーに良くある36の香りを小瓶に詰めたキットです。 因みにこれらの36の小瓶が綺麗な木材の箱に梱包されているルネデュカフェとは、フランス語に直訳をするとコーヒーの鼻という意味になります。
コロンビアコーヒー連合70周年を記念して作られたルネデュカフェは前述の如く発売から20年以上経っていますが、似たような製品は存在し近年ではスペシャルティーコーヒー協会(SCA)オンラインストアでも販売されているCoffee Flavor Map T100と言う韓国製のアロマキットもあります。アメリカなどではルネデュカフェと同等の値段であるにも関わらず、それを凌駕する100もの香りを誇るこのキットは2016年に現れましたが、定番は相変わらずQグレーダー試験でも使われ続けているルネデュカフェとなっています。
ルネデュカフェ入手の必然性
それでルネデュカフェの値段ですが、日本では5万円強、アメリカでも300ドル以上と個人で買うにはちょっと高価な買い物です。しかしQグレーダー試験で使用されている以上、アロマの訓練を適宜行うべくどうにかして入手せざるを得ないと言えるでしょう。
私の場合、幸運にも訓練パートナーのベンがキットを持っていたので、それを利用しました。日本ではオンラインストアから買えるものの、中米ではその様な可能性もなかったので、ベンに大感謝でした。
上述の通りにルネデュカフェを持っていないと嗅覚訓練に破滅的なハンディキャップを負う事になるので、Qグレーダー訓練目的だったら知人等が持っているものを借りるか、新たに買うかして絶対に入手しましょう。言い換えればこのキットは入手出来るまでは少なくとも50日の訓練だけでQグレーダー試験は先ず成功し得ないので、受験を試みる人には必需品であると言える程のものです。
同じ様な値段のCoffee Flavor Map T100を入手して訓練をした方が費用対効果が良いのでは、と指摘されるかも知れません。それに対して私から言えるのは、そうかも知れないが、やはりメーカーによって同じはずの香りでも多少違ったり、ルネデュカフェにはあってもCoffee Flavor Map T100にはない香りもあるかも知れません。
ルネデュカフェと言う同じ製品でも、実際私の経験でもロットによって同じ香りのはずのものが同等に感じられない事もあり、いくつかのアロマについては自分が訓練に使ったものが試験会場で出たものと違う香りと感じられるものもありました。その違いはメーカーが違うとより顕著となると思われますので、そこはやはりリスク低下を図るには訓練でもルネデュカフェにする事が妥当だと思います。
ルネデュカフェの香り一覧
ルネデュカフェには36の香りがあるのですが、それを以下に分類ごとにリストアップします。 このリストを見るだけでもどれだけコーヒーの香りが種類に富んでいるかがよく分かると思います。
土系 | 1.土 |
動物系 |
18.バター |
野菜系 |
2.じゃがいも | 19.蜜 | |
3.豆 | 20.革 | ||
4.きゅうり |
トースト系 |
21.バスマティ米 | |
乾燥/植物系 | 5.わら | 22.トースト | |
木系 | 6.ヒマラヤスギ | 23.麦芽 | |
スパイシー系 |
7.クローブ | 24.メープルシロップ | |
8.胡椒 | 25.キャラメル | ||
9.コリアンダー | 26.ダークチョコ | ||
10.バニラ | 27.ローストアーモンド | ||
花系 |
11.アカフサスグリ | 28.ローストピーナッツ | |
12.コーヒーの蕾 | 29.ローストヘーゼルナッツ | ||
フルーツ系 |
13.コーヒーの果肉 | 30.ウォールナッツ | |
14.クロサスフグリ | 31.ビーフ | ||
15.レモン | 32.煙 | ||
16.アプリコット | 33.キセル | ||
17.リンゴ | 34.ローストコーヒー | ||
化学物質系 |
35.薬 | ||
36.ゴム |
この香りの分類の仕方は幾つかあるのですが、ここではキットにある資料通りの分類のみを紹介します。これらの香りや分類についてのより細かい説明は後日するため、今回は控えます。
以上、今回はルネデュカフェの紹介を中心に書きましたが、コーヒーの香りはとても奥が深いテーマである事を念頭に、次回はメインの嗅覚訓練の話と並行した、アロマの興味深いあれこれについて書きます。