コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

コーヒー鑑定士が産地から、超愛飲家・プロ向けにスペシャルティコーヒー事情や経験談を生中継!

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まろやかなワイン風味のグアテマラ・コーヒー

暫く振りになってしまいましたが前回に続き、先日経験したカッピングイベントについて綴ります。今回はグアテマラで10年ぶりに再会したカッピングの先生との素晴らしいコーヒーの査定のお話です。

元ANACAFEのチーフ・カッパーとのカッピング

今回はエルサルバドルから陸路を通してグアテマラを訪問し、10年ぶりに私のカッピングの先生、エドゥアルド・アンブロシオを訪問しました。その当時グアテマラのコーヒー業界統括機関であるANACAFEのチーフ・カッパーであったエドゥアルドは、グアテマラ産を始めとするスペシャルティーコーヒーの素晴らしさについて大いに教えて頂いた方です。

その昔の話になりますが、某商社のエルサルバドル事務所に勤務していた私は上司の指導の元中米レベルでコーヒーを扱っており、素晴らしい品質の為に取扱量も多かったグアテマラのコーヒーをカッピングするために良くANACAFEのカッピングラボを訪問していました。

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絶妙な風味のグアテマラのコーヒー

そういう所以で我々のANACAFEとエドゥアルドとの関係は親密なものであり、ある時は例えば弊社とANACAFEが力を合わせて日本からのコーヒー研修生を受け入れた程です。同研修はグアテマラ・コーヒー情報や知識についてのプレゼン、また複数生産地域のコーヒーのカッピングと遠く離れた農園の訪問を含んだとても豊富なものであり、通訳を兼ねて参加させて頂けた私にとっても非常に有意義な経験となりました。

現在では中米を代表するQインストラクター

そんなエドゥアルドとの再会が出来たのはグアテマラを訪れる機会が到来した為で、久々にエドゥアルドをコンタクトすると彼も親切に面会依頼を受け入れてくれました。実はエドゥアルドは数年前にコーヒー・スクールとコーヒーの輸出を軸に起業しており、中米でQグレーダー資格を与える検定士として筆頭的な存在にまでなっています。 

エルサルバドルの多くのQグレーダーがエドゥアルドの下で資格を得たことを聞いていた私は、そんな名誉高き彼と久々に面会して話が出来る事だけでもとても楽しみにしていたのですが、カッピング・セッションを準備して頂くオファーまでもらい、恐縮ではあるものの喜んで受け入れました。

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エドゥアルドは奥さん、兄弟と共にコーヒービジネスを行う

コーヒー業界での成功を絵に描いたようなエドゥアルドの事務所はグアテマラ郊外の、数年来大繁盛の高級店が並ぶショッピングセンターに隣接した綺麗なオフィスビルに位置していました。エドゥアルドの秘書に案内され事務所に入ると彼が暖かく迎えてくれ、カッピング・セッションの準備が出来た部屋で再会の喜びを分かち合うように夫々の10年来の経緯を一通り話し合うとカッピングに移りました。 

まろやかなワインの傑作コーヒー

この時のセッションには何と、夫々が3カップに投入された12ものサンプルが準備され、二つのテーブルに別れていました。エドゥアルドが気を効かせてこんなにまで多くのコーヒーを評価させて頂ける事に有難く思いながら先ずは一つ目のテーブルにある6サンプルを嗅ぎ、口に含むと何年も感じていない風味のためか、最初は正直言いますとその感覚の特定に手こずりました。

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エドゥアルド先生との貴重なカッピング・セッション

と言うのも多くのサンプルに何か、より慣れているエルサルバドルのコーヒーには殆ど、或いは全くと言って良い程感じた事が無い、とても興味深い風味特性があったのです。より神経を集中し、二ラウンド目をトライするとその特出した感触がワインの風味である事を認識しました。そうするとエドゥアルドとの再会を楽しんだ直後に、そうした傑出したグアテマラのコーヒーとの再会をも満喫出来たその日がとても記憶に残るものになりました。 

二つ目のテーブルにもやはり味わい豊かなワイン風味が強く感じられるものがありました。また、後にゲイシャであると確認されたブルーベリーやジャスミンが感じられるサンプルがあり、これについては結構パナマ産や特に良いエルサルバドル産に似た感じのものでした。このゲイシャはそのカップの高品質で有名なバラエティですが、実は今回のカッピングの多くのサンプルはカトゥアイやサルチモールと言った、特に優れたカップを生まないバラエティである事に驚かされました。

新産地を含む味わい深きコーヒー

もう一つこの最後の件に関して学んだことはグアテマラの首都から北部へ百キロ弱にあるバハ・ベラパスと言う地域でとても味わい深いコーヒーが栽培されていることです。この地域はANACAFEが促進するグアテマラを代表する8つのスペシャルティーコーヒー生産地域の一部ではなく、グアテマラで最良のコーヒーはそれらの地域に限るものと思っていた私にとっては大きな驚きでした。

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味わいしては感想を分かち合う

12のサンプルのうち、4サンプルがバハ・ベラパスのコーヒーだったのですが、何れも今回カッピングした中ではワイン風味が特出した素晴らしいものでした。その他にもグアテマラを代表する知名度高きメキシコとの西部国境に面するウエウエテナンゴのサンプルも3つあったのですが、それ以外は首都周辺から東部と南部に広がるフライハネス地方が4つ、また東部のホンジュラス国境に面したヌエボ・オリエンテが一つありました。

エドゥアルド曰く、グアテマラでは近年どの産地でも農家の努力により栽培や精製技術が大幅に向上したため、どこのコーヒーでもとても高い品質に仕上げているとの事。その改善は目覚ましく、その為に例えあまり高品質カップとして見なされていないバラエティの豆でも、絶品に仕上げられているとの事です。

今回その様な素晴らしいコーヒーの味わいを確認させて頂いた私としては、ただただグアテマラのコーヒー業界の層の厚さを認識させられ、世界中に多大なる愛好者を持つ背景にはグアテマラの農家によるそれだけの奮闘があっての事だとつくづく思わされました。

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グアテマラの豊かな環境は素晴らしいコーヒーを生む

今回のグアテマラでのカッピングで学んだことは多く、エドゥアルドに大感謝でエルサルバドルへ戻った私は後日コーヒー農協の農園を訪問しました。次回はその模様をお届けします。