試練多き環境下の新設農協の船出(1)
先日エルサルバドルコーヒー審議会の友人、エルネストに招待されて同国の最大コーヒー産地にあるアパネカ地方の農協を訪問しました。パロ・ベルデと称する、去年設立されたばかりのその農協の農園は海抜1,400メートル以上と言うスペシャルティコーヒー栽培にはもってこいの素晴らしい環境にあります。この様な中米の農家が直面する厳しい現状と希望を紹介します。
新設農協と支援機関一体の有機農業導入の取り組み
コーヒー審議会事務所があるエルサルバドル首都圏から陸路1時間半、エルネストら審議会メンバーとパロ・ベルデ農協の農園に午前9時頃到着して車両から降りると、我々が住んでいる標高900メートルの首都圏よりも涼しい空気に迎えられました。この地域は私も住んでいる標高900メートルの首都圏に比べ曇りがちですが、これは暑い南国に住んでいる人々にとっては気温を下げ、有難く感じるものです。
今回の訪問の趣旨は同農協に対して生物肥料の作り方と使い方の指導です。これは20名の零細農家組合員を持つこのパロ・ベルデ農協が、コーヒー審議会と手を組んだイタリア政府の国際協力資金を運用するアフリカ70と言うNGO(非政府組織)から、コーヒーの栽培全般に関して受ける研修の一環です。
こうして生物肥料の利用を促進する根拠には、より広く一般に使われている化学肥料が起こす土壌汚染を防ぎ、また農家にとっての施肥コスト削減を図るものです。この様な有機農業の手段は、資金力は弱いが農園での労力に費やす時間はある零細農家にとってはもってこいの栽培改善策です。
この日も多くの組合員が理論的な研修を受けた後、農家が安易に入手できる材料を使って実際に皆で和気あいあいと後に農園に施肥する生物肥料を作りました。
コーヒー国際価格連動の罪
組合員が実習を行う合間を縫って、私はエルネストに誘われて近くに住む90歳のコーヒー零細農家、マヌエル・アマヤさんの農家を踏査させて頂きました。マヌエルさんの農園は小さくも木々の枝に深い緑のパカマラ等のバラエティがびっしりと実っており、高齢にも関わらずコーヒーの世話に大いに精を出されておられる事が感じられました。
そんな活気のあるマヌエルさんの農園ではありますが、園内を散策すると生い茂るコーヒーの木々とは対象的に、その青々さと比べるからだろうが、何らかの作物があるものの痩せこけた様な地面が顕になった印象の強い区画が二つほど見受けられました。
エルネストによると以前はそれらの区画も生き生きとしたコーヒー農園だったのだが、他の多くのコーヒー農家同様に最低限の生活を可能にしてくれる値段でコーヒーが売れないために、作物転換が進んでいるとの事でした。
より具体的に言えばコーヒーの一ポンドが一米ドルに満たない値段でしか買い取られないとの事です。これは簡単に言えば以前にもこのブログで紹介した通り、こう言う高品質なコーヒーを、レギュラーと差別化してスペシャルティーコーヒーとして売ることが出来ていない多くのコーヒー農家が直面する、コーヒー国際価格との連動の為だと言えます。
次回、パート2で農協訪問の続きを紹介しますのでお楽しみに。