コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

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スペシャルティーコーヒーとの一味ぼれを回想して

カップ・オブ・エクセレンスのシリーズに入る前に今回は少し形態を変えて、私が初めてスペシャルティーコーヒーに出会って心を奪われた時を少し詩的に描写したものをシェアします。

 

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それは決してロマンチックな始まりではなかった事は認めます。

 

無理もありません。そのエッセンスを私の乾いた口で味わう番を待っている間に、賞味方法を教えてくれる方々は音を立ててそれを吸っては口をゆすぐかの様に口中で動かし、終いにはまずかった、と言わんばかりに吐き出す。彼らはカップからカップへと、その様な見るからにはしたない仕草を只々静粛に繰り返すだけでした。

 

熱帯の太陽の下でコーヒーミルを歩き回った後で汗をかき、これからむさぼる獲物を食い入るかの様にテーブルに乗せられたカップを見つめる、エプロン姿の体裁がぶざまな男たちと部屋を一緒にした時から、素晴らしい初対面を期待出来るものではありませんでした。獲物を囲むハイエナの群れかのようなその光景は滑稽で、何か美しいものとの出会いを期待するには場違いとしか思えませんでした。

 

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誤解を招くかも知れないので為念確認します。と言うのも少し前に乾燥、そして湿った香りを嗅いだ時点で感覚が目覚めさせられたのです。

 

ーこれは一体・・・?何故これらのものが花やフルーツに香るのか?これは、私が頻繁に飲む程までには関心を抱かせなかった、何度も口にした事があるあの飲み物とは違う。絶対あれでは無いー

 

それは私をコーヒーのワンダーランドへ連れ、私の興味と期待感を高揚させました。と、それもこれらの男どもの無作法な行為が私を現実に引きずり戻すまででしたが・・・。

 

そして私が儀式を行う番が来ました。まだ温かい液体の水面上に浮かぶコーヒー粉を包むカップが乗ったテーブルに近づきました。これから自分がそのコーヒーに対して犯す無礼への容赦の願いとしてカップに向かってお辞儀をするかのように、私はそっと腰をかがめて浮き粉を崩して鼻を近づけると再び素敵な香りを感じました。乾燥したときよりもマイルドではあるが持続する、異なるアロマを覚えました。何よりも、それは私の興味をそそり戻しました。再度誘惑された私はそのコーヒーに尋ねました、あなたはこれからどれだけ素晴らしいものをこれから私に見せてくれるの?、と。

 

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浮いているコーヒー粉をカップから取り除くと正念場が到来しました。他の男どもがやったように私も卑劣に音を立ててすする時が来ました。それがすでに私に現してくれたものに更に敬意を表す様により腰をかがめ、液体をスプーンですくい、できる限り味わえるようにそれを気化させるが如くズーッと言う音を立てて吸い込みました。

 

これが初めてのコーヒーのカッピング-いわゆる香りと味を感じる事による風味の評価-の経験であったため、私のテクニックはその魅力を適切に評価するには十分で無かったとでしょう。それでも口に入れて動き回したとき、口中は虹のように色とりどりの風味で満たされ、それは直に私の魂に届きました。私はそれに乗っ取られました。そして降伏しました。それは至福を感じさせてくれました。そうしてエクスタシーに達しました。楽天地を見た感でもありました。いくら言葉で表現したくとも言葉が足りないのが悔しいほどの素敵な感じでした。

 

こうして比例なき風味豊かなスペシャルティーコーヒーは私をその虜にしたのです。

 

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次回は絶対に(?)道草を食い続けずにカップ・オブ・エクセレンスに戻ります!