コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

コーヒー鑑定士が産地から、超愛飲家・プロ向けにスペシャルティコーヒー事情や経験談を生中継!

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Qグレーダー取得の決断(パート1/2)

 今回の記事から暫くQグレーダー取得に関する情報及び経験談を綴りますが、今日は先ず私がQグレーダーを取得する決意に至った経緯を説明しようと思います。それにはスペシャルティコーヒーとの出会いが先にあったのでそこから始めましょう!

スペシャルティコーヒーとの出会い

元々私はコーヒーとの関係を希薄にしている人間でした。 コーヒーには特に興味があった訳でもなく、何処かへ出かけて飲み物チョイスにコーヒーがあれば少し飲むか、と言う位の扱い方しかしていませんでした。

 

でもそんな私に運命の出会い、パート1がありました。それは 某大手商社の中米事務所で勤務する機会をゲットした2007年の中頃でした。同事務所の上司の説明によるとコーヒーと自動車のビジネスを担当するのだと言う話を受けた当時の私にとっては、どのプロダクトを扱うかと言うことより大手商社の事務所で勤務できる事の方が嬉しかった事を覚えています。

 

しかし真なる運命の出会いは、商社勤めを始めて通うようになったカッピングルームで起こりました。会社が出資しているコーヒー精製所のカッピングルームには、スペシャルティを含む挽いたコーヒーがセラミックの器に並べられていました。それらのコーヒーを教えられた手順でカッピングをすると、素晴らしい様々な香りや味によって空間が満たされた万華鏡の様な世界を初めて体験しました。一目惚れとはこの様な経験を指すのだと思います。

 

10年来憧れのQグレーダー

Qグレーダーと言うカッパー資格への憧れはその頃から始まりました。スペシャルティコーヒーをカッピングする事の素晴らしさを発見してしまった私は幸運にも会社の研修として、カッピングを初め、焙煎やバリスタの勉強もさせて頂けました。また栽培や精製現場での仕事も、出資先会社所有の農園と精製所で数日泊まり込みをしてノウハウを吸収させて頂きました。スペシャルティコーヒーを心から気に入ってしまった私にとっては夢の様な仕事でした。

 

そこまでスペシャルティコーヒーとカッピングに惚れ込むと、カッパー資格として世界最高峰のQグレーダーに何時かなる事が目標となってきました。これから長らくコーヒーに携わりたいし、もっとスペシャルティコーヒーの複雑な香味をより深く理解したいから、何時かはQグレーダーになるんだ、と。

 

そうして数年間コーヒーとの特に密な時を過ごしたのですが、ある日残念ながら商社勤務を辞め転職してしまう事になりました。それ以降も多種の豆を焙煎したり中米の某銀行の取締役としてコーヒー農家へのクレジット貸付の決裁を担当したり、某国際開発銀行でコーヒー借款案件作成をサポートしたりしましたが、商社勤務時と比べるとコーヒーとの関係が薄れてしまい、香りや味わいの浸り度合いに関して言えば寂しい勤務経験を過ごす日々となりました。

 

しかし商社勤務を辞めた際、ある誓いをしました。それは何時かはまた、幸せの形を教えてくれたコーヒーの世界へ戻ることでした。その誓いは時が経っても忘れることのないものになりました。

 

ベンとの運命的な出会い 

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Ben's Coffee旗艦店のベン

そうこうして幾つかの職場で時が過ぎていくのですが、コーヒーの世界への完全復帰を夢見る私にあるチャンスが訪れました。仕事先でのコーヒー借款案件作成において、コーヒー組織の改革案を作成するコンサルタントと共に幾つかの関連企業家や団体などをインタビューをする事になったのです。その企業家の一人が、 中米でベンズ・コーヒー と言うコーヒーショップ・チェーン店及びコーヒー農園を経営しているカナダ人のベンでした。

 

ベンとの最初の出会いの場所は、とてもポピュラーなショッピングセンターにある彼のフラッグシップ店舗でした。その店は、憩いの場的な噴水がある広場とそこを訪れる人々の眺めが絶好であり、数年前に日本から訪れたコーヒーの第一人者的な方も、渋谷駅前のスターバックス店みたいな超プレミアムスポットだと称賛された程のお店です。

 

そんな素晴らしい環境の中、 2時間にわたってコーヒー分野のプロ、ベン、またコンサルタントとコーヒー組織に関するとても興味深い話をした後コンサルタントは去ったのですが、それからベンと私は二人で残りまたニ時間ほど話を続けました。

 

ベンとはお互いに人生でコーヒーやそれ以外の分野で何をやって来たかという話をもとに、それぞれの人生観をシェアしあいました。その中で私が何時かはコーヒーの世界へ戻りたい事を伝え、ベンからは自分のコーヒーを近い将来日本へ売りたい願いを聞き、二人とも過去だけでなく、未来に抱く思いを分かち合ったのです。

 

その日のベンとの会話が私の将来を大きく左右するものとは思いもしない私は、 何年ぶりかに大好きなコーヒーについて堪能なベンの舌から出る話を耳と目を大きくして聞き、時間が過ぎるのも感じない程楽しんだのです。

 

(次回へつづく。)