トライアンギュレーション訓練(パート1)
訓練の内容が決まり、実行に移る時が来ました。トレーニングの場所は多くの豆、また必要となる機材が揃ったベンの事務所で、週に少なくとも二日、出来れば三日か四日会って行う事となりました。実際ほぼ予定通りの頻度で実行出来たのですが、会うと約2時間の間、特にトライアンギュレーションとルネデュカフェのコンボで訓練することが多かったです。時間帯としては平日の仕事帰りの午後5時過ぎから、または週末は土曜日の午前中のトレーニングをしました。訓練後は落ち着いて1、2時間コーヒーを飲みながらその日のトレーニングを振り返ったり、研修及び試験当日がどうなるかと言った話をしながら訓練の日々が過ぎていきました。
簡単なようで(?)難しいトライアンギュレーション
前回簡略的に紹介しました通り、トライアンギュレーションとは3カップのセット中で1カップだけ他の2カップとは違うものがあり、その違うものをカッピングして特定する訓練です。これは簡単な様でかなり難しい練習です。
と言うのも例えば セットにあるのがグアテマラとスマトラの全く違う産地のコーヒーだったり、ウオッシュドとナチュラルの異なった精製方法だったらかなり性質が違うので結構簡単に味と香りの違いが区別出来ます。だけど全く同じ農園の同じ精製方法のコーヒーで違うのはバラエティーだけだったり、はたまた同一産地の同一バラエティーだが、違うのは農園だけだったりすると難易度は何倍にもなります。
実際我々が練習で使ったコーヒーの多くはベンの農園のものが殆どで、時には農園で良くて数百メートルしか離れていない木で育った同一バラエティー、同一精製方法のコーヒーがセットになっている事もあり、味覚と嗅覚のみの識別はこの上ない困難を伴うものでした。
トライアンギュレーションでカッピング能力向上!
この様にかなり高レベルのカッピング能力が必要とされるトライアンギュレーションですが、その為にこの訓練を行う事でカッピング能力の全体的な向上が見込まれます。この訓練では香りと味だけを頼りに3カップの中からどれが違うのかを特定しなければいけません。なので、具体的にはどの様にこれを成し遂げるかは後に説明しますが、香味感覚をこれ以上無い程ビンビン覚ました上に100%超の集中度で挑まなければとてもじゃないけど出来ない離れ業です。
こうして必然的に全体的なカッピング能力の向上を促進するトライアンギュレーションのお陰で、前回紹介のSCAカッピングフォームの使用及び違った焙煎度合いのコーヒー、水溶液、そして有機酸コーヒーのカッピングと言った、意図的に重きを置かなかった他のカッピング関連訓練の技術も上がります。
ベンの言葉を借りて言えば、トライアンギュレーション訓練をもって意図するところは酸味、甘味、ボディーなどのレベルの認識を脳に強制する事によって、味感覚思考回路をフォーマットする事です。この事からもカッピング能力向上におけるトライアンギュレーション訓練の中心的位置づけが明白になると思います。
トライアンギュレーションのステップ・バイ・ステップ
- 豆を挽きコーヒー粉となった状態(香り-フラグランス)。
- お湯を注ぎ、コーヒー粉が湿った状態( 香り-アロマ)。
- カップの表面に浮いたコーヒー粉の層(クラスト)を破る時(香り)。
- 液体コーヒーを口中に入れた時(風味)。
それぞれの段階に香り、風味と記述しましたが、これはその時々で何れを評価するかを示したものです。また、乾いた状態の挽き豆の香りをフラグランスと言い、湿った状態の香りをアロマと言う事もご理解頂きたいと思い、書き加えました。
- 香りや味の感覚属性の度合(風味、余韻、酸味、コク、バランスなどの強弱や質)
- 香味の識別(何の様な香りや味がするか。例:レモン、いちご、チョコレート、ブルーベリー、土、シナモン、ラズベリー、お茶、ジャスミン、煙などなど)