コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

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50日間のQグレーダー攻略計画の策定

果たしてベンとのQグレーダートレーニングはこう言う計画を作った!と言ったところを今回は取り上げます。受験をするからには準備をしなければいけなかったのですが、大半が実技試験であるQグレーダーの場合、殆どが勉強というよりは訓練と言う形のものとなりました。

試験と訓練内容のレビュー

試験の攻略計画を練る第一歩は当然ながら先ず、どう言う内容の試験かを調べるところからでした。これには幾つかの情報源を駆使しましたがその一つは、試験会場の研修所オーナーであり、ベンが十数年前から親しくしているコーヒーの世界的第一人者的人物、ウィレム・ブート氏でした。ベンの同氏との長い関係のお陰で、ブート氏からは幾つかの貴重な試験情報をゲット出来ました。
 
ブート氏にはとても親切にベンの友達として多くを教えて頂きましたが、当然のことながら何でもかんでも質問するのは我々も気が引けたので、もう一つのソースを使いました。それは誰でもがアクセス出来る、インターネットでした。インターネットには限りがあるにしろ、テストやその訓練方法に関して情報が盛り沢山です。
 
ベンも私もこれらを駆使しながら情報を得たのですが、それをベンの10年以上のコーヒーカッピング及び販売経験と言うふるいにかけてこそ、最終的な訓練計画策定に至ったのです。
 

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中核となる訓練事項

調査とベンの長年のコーヒー経験から得たノウハウの結果、特に3つの技術と知識を集中して訓練する事になりました。その3つとはトライアンギュレーション、嗅覚訓練(ルネデュカフェ)、一般知識勉強です。
 
この中でも要となるのはトライアンギュレーションで、これはカッピング訓練の一環でありQグレーダー試験の一グループでもあります。トライアンギュレーションと言う名前の由来は3つのカップのコーヒーを評価する為ですが、その内1つだけが他の2つのカップとは違い、どれが違うのかを味覚と嗅覚だけでブラインドテスト(目隠しテスト)して選ぶものです。似たようなコーヒーがペアされる事もしばしばあり当然のことながら鋭い感覚が強いられ、カッピング技術を養成するには絶好の訓練です。
 
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乾燥、また湿潤したコーヒー粉を評価するトライアンギュレーションでも 嗅覚が養われますが、コーヒー業界ではルネデュカフェと言う、コーヒーによく確認される36の香りエッセンスが小瓶詰めになっているフランス製のアロマキットが使われます。このアロマキットの評価はQグレーダー試験の一グループとなっている程のものでコーヒーの香りを特定するにも必須であり、それぞれの香りを認識する事は必要不可欠です。
 
前述の通りQグレーダー試験の19のテストは一つを除き全て実技試験ですが、唯一の筆記テストとなっているのが一般知識試験です。この試験の対象となる知識は、コーヒーの品種、栽培、精製、焙煎、入れ方、カッピングに関する質問から、歴史、地理、商業とその習慣、貿易など、非常に広範囲となっています。よって、コーヒーに長く従事してきた人でも再勉強が要される試験です。

その他のトレーニング

試験攻略計画の中枢となるのは以上の訓練であり、これらを何度も繰り返せばしっかりと受験の準備が出来るというものです。但し、より細かく見れば後により詳細に説明しますQグレーダー試験で試されるテストには、上記の訓練では少なくとも直接的にはカバーされない 以下のトレーニング事項もあります。
  • SCA(Specialty Coffee Association)書式を使ってのカッピング
  • 4つの違った焙煎度合いのコーヒーのカッピングによる差別化
  • 4種類の有機酸を含んだコーヒーのカッピングによる差別化
  • 塩味、甘み、酸味の違った濃度の水溶液のカッピングによる差別化
  • 生豆の欠点豆確認
  • 焙煎豆の欠点豆確認
これらの訓練はある程度行ったとは言え、前述の3つの中核となる上記トレーニング事項程には強調して訓練しませんでした。ざっくり言って充てた時間は前者が9割、後者が1割といったところでしょうか。そのようにした最重要理由として、やはり試験までの少ない時間を最大限活用するには中核となる訓練に集中するのが最適だと判断したためです。この根拠として、例えば上記のあまり優先しなかった技術の多くが所詮カッピングであり、そのためにカッピングスキル発展にはもってこいのトライアンギュレーションに重点を置くことがありました。
 
上記の理由は言い換えれば、訓練内容を意図的に優先化したのは一部のテストがあまり難しいものではなく、重要視する必要がないとみなしたためです。これに当てはまるのが特に4つの違った焙煎度合いのコーヒーのカッピング、水溶液のカッピング、そして生豆及び焙煎豆の欠点豆の確認です。欠点豆の確認に関してはベンは勿論の事ながら私も何年も焙煎をする際に豆の選別をした経験があるため、難なくテストをクリア出来るだろうという読みでした。違った焙煎度の豆と水溶液のカッピングについても同様に、それ程困難な作業でなかろうと言うのが目論見でした(少なくとも違った焙煎度の豆については後日痛いほど考えがどれだけ甘かったを思い知らされる事になりましたが・・・)。
 
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最後に3つの訓練を優先した事にはもう一つ我々の情報や理解不足をぶち開けて言う理由があるのですが、これはあまり重きを置かなかった前述の4つのカッピング関連技術に関して、どの様に訓練をすれば良いか分からなかった部分も大きかったものです。SCAのカッピングフォームについては正確には使い方が分からず、有機酸コーヒーと水溶液のカッピングに関してはそれぞれ溶質を溶かす濃度が分からなかったのが事実です。なので、ある濃度を決めて訓練してもテストの際の濃度がそれより濃かったり薄かったりすると結局は訓練しなかった場合と殆ど同じ結果になるのでは、という考えからあまり力を入れても意味が無いだろうと決め、これらは殆どトレーニング対象にしませんでした。

いざトレーニング開始!

と、この様な思考過程を経て練り上げた訓練計画ですが、重要なのはその実行。次回からは発生した苦労、技術改善、またハプニング満載に、実際の訓練過程をお届けします。