コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

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バリスタ・チャンピオン主催の世界同時カッピングに参加!(1)

今回から数回は少しカップ・オブ・エクセレンスのお話を休み、私が経験した最近の中米コーヒーシーンの見聞を紹介します。今回は先ず、先日開催された世界同時カッピングイベントへの参加について綴ります。

バリスタ・チャンピオンのギネス記録更新と言う野望

今回の世界同時カッピングの主催者は2007年のワールド・バリスタ・チャンピオン、また「World Atlas of Coffee」と言うコーヒーの代表的な本の著者として有名な英国人ジェームズ・ホフマンです。イギリスにSquare Mile Cofee Roastersの名の焙煎屋を持つホフマン氏はとてもポピュラーなユーチューブのビデオチャンネルを持ち、十万人以上ものサブスクライバーを誇っています。

今回ホフマン氏が世界同時カッピングを企画したのは現存のギネスにある、1,559人による同時カッピングと言う今年6月に実施されたコロンビアの記録を塗り替えるのが一つの目的だったそうです。

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世界同時カッピングは元世界バリスタ・チャンピオンが主催

これはインターネットを駆使した世界同時カッピングという画期的な手法で行われるものでしたが、記録を塗り替えられるか否かに関わらず、ホフマン氏にはやったら面白いだろうとの遊び心もあるそうです。そこから言う大胆なイベントを実施するところは正に大物です。

カッピングのパッケージは世界中の3,500人に送付

カッピングが実施されたのは9月21日でしたが、そのたったの一ヶ月ほど前にイベントが発表され、参加希望者がインターネットで募集されました。ホフマン・チームによると彼らの予測をも超える3,500人ものパッケージが申請そして送付され、カッピングの当日までに全てではないものの多くは申請者に届いたとの事なので、とても多くの人々が参加するイベントとなりました。

カッピングの対象となったのはホフマン氏が焙煎する豆のうち5つのコーヒーですが、夫々のコーヒーが30グラムなので合計150グラムのパッケージが世界に送られました。またそれと共に水に混ぜるミネラルまでもが含まれていましたが、これはカッピングにおける水の中心的な存在を考慮してのもので、世界どこの水が使われてもなるべく同じ風味にする手段です。

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コーヒーの風味を侵さないためには水のコントロールも欠かせない

もう一つ配慮された点は参加者の便宜ですが、ホフマン氏は今回のカッピング参加のコストを抑えるためにパッケージの価格を6英ポンドと言う低価格に抑え、また輸送料も最小限にするために軽量化も計ったそうです。

エルサルバドル・チームは人権分野で活動のジャーナリストのお陰で参加

この様に細心の配慮がされたカッピングですが、一参加者として一方ではホフマン氏のイギリスから数千キロ離れた中米エルサルバドルからは、ニコラス・ロドリゲスが今回の世界同時カッピングへの参加資格ー言い換えれば参加のための材料=5つのコーヒー豆ーを得ました。

ニコラスは人権分野で活躍する同国籍のジャーナリストで、話題の多くは人権に関すると言う意味ではホフマン氏とは異なるもののやはりユーチューブのビデオ・チャンネルを持ち、時にはコーヒーの話も扱い、過去にコーヒーショップ経営の経験もある方です。正にスペシャルティーコーヒーの超愛飲家と言える方だと思います。

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中米でも国産コーヒー消費促進のためにソーシャルメディアが駆使される

そのニコラスにとって今回の世界同時カッピングに抱く関心は、この様なイベントを放送し多くのエルサルバドル人に見てもらい、コーヒーに対する興味を持ってもらいたいと言うものです。それによって国産コーヒーの需要をあげて産業育成を促進する事が狙いであり、愛国心旺盛な見習うべき姿勢を持った方だと思います。

その狙いを持ったニコラスは参加資格を得るとエルサルバドルコーヒー審議会に共同でエルサルバドル・チームのカッピングを放送する提案をし、その熱意に対してついには審議会が承諾したものです。こうしてエルサルバドル・チームのカッピングは審議会のコーヒー・スクールにて行われ、そこからセッションの模様が放送される事になりました。

そのエルサルバドル・チームの構成メンバーはと言いますとニコラスを筆頭として、審議会品質課長のエルネスト・ベラスケス、審議会コーヒー・スクール長のマヌエル・ビンデル、また同スクールのマリオ・エスコバルですが、そのメンバーに加えて友人でもあるエルネストの好意により私も参加させて頂くことになりました。

 

次回はカッピングのパッケージを受け取る為のロジスティックス面でのニコラスの努力とイベント実施の模様をお届けします。