コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

コーヒー鑑定士が産地から、超愛飲家・プロ向けにスペシャルティコーヒー事情や経験談を生中継!

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スペシャルティーコーヒーの品評会、カップ・オブ・エクセレンス(6)

COEイントロ最終回の今回は更なる公益のためにCOEがクリアしていくべき試練について語ります。 

これからも取り組んでいくべきCOEの試練

この様に20年の歴史を通して多くの利点を生み出しているCOEですが無論の如く全てがバラ色ではなく、スペシャルティーコーヒー産業発展のためにまだペンディングとなっている課題があります。その中で特筆すべきはやはりCOE外で売買されるスペシャルティーコーヒー豆の価格向上でしょう。

言い換えればCOEの入札では高値で売られるが、その場外ではあまり高い値段で売れないと言う事です。この理由の一つとして良く挙げられるのは、農家のマーケティング力の脆弱性です。これについては、そうと言えば確かにその通りではあります。 

但し多くのコーヒー農家の事情を考慮すると、この様に簡単には片付けられなくなります。と言うのも農家の多くは小・零細農家であり残念ながら資源豊富な身であるとは言えず、学歴も良くて読み書きができる程しか無い方達です。

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逆境にもへこたれぬ零細農家のマヌエルさん(右の方)の農園と自宅

その様なバックグラウンドの人々に自分のコーヒーを巧みに売る責任を押し付けるのは人道的では無いので、この論理には一理あるものの、重要な欠陥を伴っているために有効な根拠とは言い難いと思います。

アラビカコーヒー国際価格と言う宿敵

よって、COE入札外の比較的低い価格と言う問題の根本は、やはり一般市場で売買される大半のスペシャルティーコーヒー豆の価格がニューヨークのアラビカコーヒー国際価格に連動されている為だと思います。何故これが問題となるかは、アラビカコーヒーの世界貿易のうちスペシャルティーコーヒーは凡そ一割ほどにしか達しく、9割はレギュラーコーヒーであることです。 

この事がなぜ肝心なのかと言いますと、値段はやはり量が多いものの需給状況によって定められるので、この場合はより質が低いが量がスペシャルティーコーヒーの9倍もあるレギュラーコーヒーの生産状況によって決まってしまうということです。

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国際価格は長年低迷のまま

ここで需要はほぼ安定して上がっているために、国際価格設定は凡そ供給側の推移によるものとなります。その供給は近年は需要以上に上がっており、結果として価格下落をもたらします。 

この結果として多くのスペシャルティーコーヒーCOE入札外ではあまり高く売れないと言うことになります。確かにレギュラーコーヒーの値段以上ではあるものの、それはレギュラーの質が比較して低いから当然なのですが、値段の違いが価格相応でない事が指摘されます。 

改善の鍵は味わいを吟味出来る我々にある

スペシャルティーコーヒーにはレギュラーコーヒーと比べ物にならない味の深さがあり、それが大きな質の違いとなり、このような素晴らしいコーヒーを飲んで味わいを吟味できる我々にとっては、普通のコーヒーは与えてくれない至福の時をもたらしてくれます。言うまでもなく、こう言った経験をさせてくれるものには多大な価値があります。

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コーヒー計り知れない幸せを与えてくれる

この様な幸せを満喫出来る我々スペシャルティーコーヒー愛飲家はその見返りとして、その価値を頭で良く理解し農家へのフェアな対価の支払いを惜しまず、大いに心で有り難みを感じる大切な任務があると思います。

  

COEについては後日また続けますが、その際にはこのブログで世界デビューする、COEの歴代大会記録の分析を下にしたスペシャルティーコーヒーの過去の歩みとこれからの行き先について語ります。