スペシャルティーコーヒーの品評会、カップ・オブ・エクセレンス(4)
今回もまたCOEイントロを続けます。長期にわたる落札価格上昇のトレンド、農家の重要な役割、またこの大会がもたらす利益についてもう少し詳しく綴ります。
COE落札価格は時を経て徐々に上昇
前回はCOEで入賞した豆がどれだけの高価格で落札しているかを紹介しました。この落札価格は20年前にCOEが開催され始めてからそういう高いレベルであったのではなく、大会が開催される毎に徐々に上がってきたものです。
では具体的にどの様に上がってきたかと言うとCOE平均落札価格は2001年に中米で初めて開催されたグアテマラCOEでの一ポンドあたり4.56米ドルから、2019年の18.43米ドルへと約4倍に増えています。これは明らかに自然な価格上昇率ではなくCOEの功績と言えるものでしょう。
COEは農家の日々の改善努力を出す
ここでもう少し付け加えるとこのCOE落札価格上昇の筆頭的貢献者として挙げられるのは、それぞれのベストの豆を出品する農家です。当然ながらイベントの創始者、また毎年COE開催を可能にしている優良コーヒー同盟(ACE)や各国の機関も当然ながら重要な立役者ではあります。
でもやはり農家の日々の努力があって初めて美味しいコーヒーが存在し得るもので、農家なくしては幸せのひと時をもたらしてくれるあのマジカルなコーヒーと言う飲み物はあり得ないのです。そう言う大きな存在でもあるにも関わらず農家の貢献度は忘れられがちなので、常に有難みを含み念頭に置くべきプレイヤーだと思います。
他方、農家が幾ら努力しても買い手の欲する豆を的確に把握出来なかったら上述の様な落札価格上昇は起こり得ないと思います。そういう意味では農家がどれだけ買い手の欲するところを掴める様になってきたか、また買い手側もどれだけ農家の栽培、精製努力の理解ができる様になってきたかが反映される結果としての価格上昇であると言えると思います。
消費者も加わって三方良しの好循環へ
さらに言えば消費者もどれだけスペシャルティーコーヒーを十分に賞味できる様になってきたもこの図式にすぽっと入ります。即ち、高品質なコーヒー栽培及び精製努力への消費者と買い手による賞味理解を得て始めて需要側のオファー額が上がり、努力が見なされた農家側もそれに伴って更に質の向上に励むことになります。
言い換えればスペシャルティーコーヒーを取り巻く全者の相互理解を深める事によって、良質なコーヒーを見付け出せない買い手と消費者、また優良豆を生産しても十分な対価で報われない農家の悪循環の構図から、質良し対価良しで全者満足の好循環のものに変化させる事が出来てきているのです。
この新たな構図はCOEの初開催から20年という長期間機能しているのですが、その基盤の一つとなるのはCOE自体が元となった農家と買い手の持続的な関係です。赤道周辺の農家と大半がそれより北に位置する買い手との間には何千キロと言う距離があり、また文化も言語もとても異なる者同士です。よってお互いの関心事などがマッチした者の間のペアリングは言うまでも無く至難の業です。
こう言った状況のもと、COEは大会と入札というスペースをもって相性の合う農家と買い手の出会いをより安易にしているだけでなく、多くの長く続いている両者間の関係に見受けられるように持続的な関係のきっかけとなっています。COEは両者にとって適したパートナーを見つけると言う大変な労力を要する仕事を簡素化し、よりスムーズにそういう関係に入れる様に貢献しています。
次回はもう少しCOEがもたらした利益について書き加え、またその反面どう言った課題がまだ残っているかについて語ります。