スペシャルティーコーヒーの品評会、カップ・オブ・エクセレンス(1)
今回から暫く、多くの産地国の農家がその年の収穫豆の品質を競い合うスペシャルティーコーヒーの年次大会、カップ・オブ・エクセレンスについて語ります。
以前スペシャルティーコーヒー産業の発展について少し触れた際にQグレーダーと言うコーヒー鑑定士のシステムやフレーバーホイールなどがその中で重要な役割を果たしている事に言及しました。カップ・オブ・エクセレンスもスペシャルティーコーヒー促進の中心的な立役者なので、大会参加国の生産事情と共により広く知って頂きたいと思います。
カップ・オブ・エクセレンスの誕生
「コーヒーのアカデミー賞」や「コーヒーのオリンピック」という別名でも知られているカップ・オブ・エクセレンス(COE)は、Alliance for Coffee Excellence(ACE、優良コーヒー同盟)が主催するスペシャルティーコーヒーの品評会です。このACEは1970年代に始まったアメリカのスペシャルティーコーヒー運動を代表するパイオニアで、後にスターバックスに1990年代に買収されたコーヒー・コネクションで有名な企業家ジョージ・ハウエルと、スージー・スプリンドラーが中心的創始者です。
COEと言う大会のアイディア自体は国際コーヒー機関(International Coffee Organization, ICO)と国際貿易センター(International Trade Centre, ITC)が1990年代なかばに構想したもので、品評会の優良コーヒーがインターネットを使った入札で売買されると言うインセンティブが組み込まれている大会です。これによってより良い品質のコーヒーの栽培と精製、またその品質にふさわしい農家への対価の支払いを促進する事が目的です。
ここで一つ誤解がないように付け加えますが、COEは何カ国かの優良コーヒー豆の良し悪しを競う世界大会ではなく、参加国が夫々の国内で生産されたコーヒーを競う国内大会です。言い換えるとブラジル大会ではブラジル産のコーヒーだけが出品され、エルサルバドル大会ではエルサルバドル産同士だけで競い合うものです。更にこれも為念の補足ですが、前述の如く出品はニュークロップ、いわゆる収穫されたばかりの豆が対象となり、その為に開催時期も収穫、精製が終わって豆を少し寝かした後に設定されます。
開催各国のコーヒー振興機関もサポート
ACEが主催で産地である数か国で催されるCOEではありますが、開催各国においてそれぞれの国々のコーヒー振興機関がサポート組織として活躍します。COEが開催されている中米の国に関しては以下がそれらの機関となります。
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グアテマラ: Asociación Nacional del Café (ANACAFE、グアテマラコーヒー協会)
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コスタリカ:Instituto del Café de Costa Rica (ICAFE、コスタリカコーヒー協会
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エルサルバドル:Consejo Salvadoreño del Café(Consejo、エルサルバドルコーヒー審議会)
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ニカラグア: Asociación de Cafés Especiales de Nicaragua (ACEN、ニカラグアスペシャルティーコーヒー協会)
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ホンジュラス: Instituto Hondureño del Café (IHCAFE、ホンジュラスコーヒー協会)
因みに上記リストの組織中ではANACAFEとACENは民間組織ですが、設立自体も全く民間のイニシアティブのものはコーヒー専門公的機関が無いニカラグアのACENだけです。それ以外は皆各国の法律によって発足され、コーヒーの輸出額の一部が収入源として確保されています。
今年20周年を迎えたCOE
初回の大会は1999年のブラジルで催されてからは、以下の年に他の国々でも開催され始め、合計12カ国で実施されています。
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2001年:グアテマラ
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2002年:ニカラグア
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2003年:エルサルバドル
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2004年:ホンジュラス、ボリビア
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2005年:コロンビア
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2007年:コスタリカ
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2008年:ルワンダ
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2012年:ブルンディ、メキシコ
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2017年:ペルー
上記のリストを見ると特に初期は中南米の開催国が多くなっていますが、2020年にはエチオピア、またインドネシアでも近々COEが開催される予定となっており、アフリカとアジアでも開催国の拡大が期待されます。残念ながら政情不安などのために大会が催されない年も稀にありますが、どの国でもほぼ毎年開催され続けています。
ところで2019年の今年は世界で初開催となったブラジル大会開催から20周年を迎えており、10月の同国大会では20年前の創始者、その頃からのパートナー、また初回ジャッジなどの豪華メンバーが参加の祝賀会となります。この20年でCOEは12カ国での140の入札回数を通して6千万ドル超の収入を達成しています。一位のコーヒーのポンドあたりの落札価格も、1999年のブラジル大会の2.6米ドルから2018年のコスタリカ大会の300米ドルまで大きく躍進しました。
どの様にしてこう言った大成功を成し遂げたかをご理解頂けるよう、次回ももう少しCOEの運営について綴ります。