嗅覚訓練(2)
ワインも及ばない恐るべしコーヒーの風味パワー!
コーヒーとワインの違いについてですが、例えばワインはアルコール飲料であるがコーヒーはノンアルコールである事などに見られる通り、違うと言えば当然違います。でも似ている部分も幾つかあり、得に何れも単に飲み物であるだけでなく嗜好品であるという点があげられます。
コーヒーとワインが嗜好品である所以は喜びを与えてくれる複雑で豊富である風味にあると言えます。前回ご紹介したとおりコーヒーの場合、その風味を具現化したのが36の香りを小瓶に詰めたルネデュカフですが、実は同じワイン鑑定士がワインの香りを具現化したのが似たルネデュヴァンであり、そのキットには54種類とより多くの香りが入っています。
これを見るとそれはそうでしょう、コーヒーよりワインの方が多くの香りがあるでしょう、と思われるかも知れませんが実際は逆です。これを科学的に裏付けるのが芳香族化合物の数で、ワインには200から300確認されているのですが、コーヒーからは何と800以上検出されています。あの優雅なひと時を与えてくれるワインでさえも及ばない、恐るべきコーヒーの風味パワーです!
ルネデュカフェ対ルネデュヴァンの香りの数の矛盾
客観的事実は前述の通りにコーヒーの風味はワインを凌駕するのですが、では何故ルネデュカフェの方がルネデジュヴァンより香りの種類が少ないのでしょうか。この最も大きな理由の一つは恐らく、何千年も飲まれており風味の追求がされてきたワインに対してコーヒーは数百年来しか飲まれていなく、またスペシャルティーコーヒーに反映されるコーヒーの風味の追求はたったの数十年の歴史しか無いからだと思われます。
但しスペシャルティーコーヒーの様にワインと言う先輩産業がある事は、ワインが数百年かけてやって来たように新たに道を切り開く必要が無いと言う意味では大きな利点です。よって、手本として見習うべき産業があるという事は歩むべき道が明快であり、その故速い発展が期待できます。スペシャルティーコーヒーも例外ではなく、嗜好飲料として急速な進歩を遂げています。
お洒落なカッピングツールのフレーバーホイール
この進歩の速さですが、これは例えばコーヒーのフレーバーホイールをとっても分かります。ここでは先ずこのフレーバーホイールが何かという説明をし、そのバージョン変化がどの様にして産業発展を反映しているかを次回掲載の記事で仕上げます。
2016年に発表された以下にイメージを紹介するフレーバーホイール最新バージョンはスペシャルティーコーヒー協会(SCA)が世界コーヒー研究所(World Coffee Research: WRC)と開発し、コーヒーのカッピングをする際の感覚属性特定をサポートする為に作成されました。
見るとフレーバーホイールは色とりどりの綺麗な何重かの円で風味の感覚属性が整った形で記載されています。更に細かく見ると円の内側の感覚属性が、フルーツ、ナッツ、野菜、蜜、花、香辛料、ロースト、酸味、発酵物などより大きな分類となっており、円の外側へ向かうごとに風味がより具体的なフルーツやらナッツやらと特定化されます。カッパーがこのツールを使う際の論理もその通りで先ずは大まかな感覚を円の内側で確認し、そこから外側へ向かってより詳細な風味を特定していく様にデザインされています。
この様に色とりどりの綺麗なデザインであり、そのまま家に飾ってもおしゃれな見とれてしまいそうなインテリアに見えますが、カッパーにとってはとても機能的なコーヒーの感覚評価ツールです。
次回はこのフレーバーホイールに関する説明をもう少し続け、フレーバーホイールの変化が反映するスペシャルティーコーヒー産業の変化の速さについて書きます。