コーヒー産地直送!~Qグレーダーの中米便り~

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コーヒー抽出法大会ジャッジに挑戦!(パート3)

今回はいよいよ抽出法大会当日のストーリーです!普段より写真を多く載せましたので、その日の雰囲気をお楽しみ下さい。

連休の賑やかな会場

フアユアはエルサルバドル西部にある、国の歴史的に最も重要な高地のコーヒー産地に四方を囲まれた小さな町。高度1,000メートルに位置している為に避暑地として、休日は近隣のより暑い低地に住む観光客でいっぱいになります。

コーヒー抽出法大会が開催されたのは、80kmしか離れていない首都サンサルバドル守護天使の祭りの連休中だったので、とても賑やかでした。大会の会場はフアユア市役所前にある中央公園広場で、広場いっぺんには食べ物や飲み物をはじめとする多種多様な露店が所狭しと売り込みをしていました。

私自身この公園は過去によく訪れているのですが、その日も定番の大きなアルビノの白蛇が観光客の首に巻かれていましたが、その日はそれを物珍しく見学する人々が普段よりより多く群れ上がっていました。

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早朝の公園の周りのコーヒーやはちみつの販売(出典:コーヒー審議会)

概ねその様な状況でしたが抽出法大会会場の直ぐ周りも負けないくらいのお祭りムードで、大会に参加するバリスタが所属するショップをはじめに、いくつかの店がコーヒーカート等を利用してコーヒーを展示し、売り込みに存分に精を出していました。

様々なバックグラウンドのバリスタが参加

大会開始の時が訪れると参加した9人のバリスタが次々に会場の前面でそれぞれの機材準備、そしてプレゼンとコーヒーの抽出をしていきました。エルサルバドルの地方で開催の比較的小さな大会ではありましたが、準備された観客席が足りなくなり立ってイベントを眺める見物人が何人も出る時もある程に町を訪れた観光客の関心を集めた大会となりました。

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時には立って見物をする人も出た会場の様子(出典:コーヒー審議会)

参加バリスタは見たところ20代の若者ばかりと言う点では共通していたものの、9人のうち3人はコーヒーショップに所属していなく、また2人の女性の参加もありました。それに加えてバリスタ所属の店の所在地は地元フアユアだけでなく、隣の町であるサルコアティタンともう少し離れたチャルチュアパのものもあり、バライエティーに富んだ方々でした。

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粉をV60に注ぐ女性バリスタ(出典:コーヒー審議会)

バリスタが大会に選び使った抽出器具はケメックス、或いはV60でした。使われた豆はエルサルバドルで開発されたパカマラが多かったですが、中にはゲイシャもありました。

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コーヒー知識豊富にプレゼンするバリスタ(出典:コーヒー審議会)

プレゼンでは使った抽出器具の選択根拠やその歴史はもとより、豆についても風味の特徴だけでなく精製方法や焙煎についても何日間どの方法で乾かした、何度の焙煎温度でどの状態まで持っていったなど、とても詳しく一生懸命に説明する方もいました。

改善の余地はありしもコーヒー良し、プレゼンも良し

バリスタによるプレゼンが行われるとメインステージのその場でジャッジが香りと風味を一通り知覚した後、ジャッジチームはカップを持ちバックステージに移動し、それぞれの評価をヘッドジャッジが集計する。この過程を一人ひとりのバリスタと繰り返しながら大会が進んでいきました。

参加者バリスタの評価に関しては前述の如くプレゼンは明快によく頑張ったバリスタが多く、彼らが入れたコーヒーにおいても素晴らしいものがありました。その中でもゲイシャは特に冷えた後に豊かにその特徴を存分に披露していました。

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バリスタが抽出したコーヒーの感覚評価をするジャッジチーム(出典:コーヒー審議会)

評価する際に一点多少驚かされたのは抽出比率の高いコーヒーが幾つかあったことで、やや濃すぎるために様々な風味が重くのしかかり合い、風味評価が困難となる事でした。最も濃いものにはコーヒー対水比率が1:10のものがあり、もっと薄かったら様々な風味がより明確に出て評価もより良かっただろうに、と言うものがあり勿体無い気がしました。

このような感想が参加バリスタの為になるよう、後に大会が終わった時には良かった点の褒め言葉と一緒にパフォーマンス改善に向けたサジェスチョンを記したものを、ジャッジチームから各バリスタに与えました。現地のコーヒーのプロモーターであるバリスタの皆さんには、これからも頑張って一層美味しいコーヒーを多くのエルサルバドル人に入れて頂きたいものです。

無所属の女性バリスタが3位の大健闘!

皆のプレゼンと抽出、そしてジャッジチームの評価が全て終わると全参加者審査の集計に移りました。

結果発表がされると一位と二位の座はそれぞれチャルチュアパとフアユアの男性バリスタが勝ち取りましたが、三位には何とショップに所属しない女性バリスタが入賞すると言う大健闘ぶりでした。日本や欧米でさえも、特にバリスタ等のコーヒー技術を競い合う大会では女性の参加が低い事が問われている折、産地の抽出法大会で女性が入賞に輝くのはとても喜ばしく、これからの更なる活躍が期待されます。

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参加証書を手に笑顔のバリスタ達(出典:コーヒー審議会)

 

途中雨が少々降ったにも関わらずフアユアの抽出大会はこの様に盛大に大成功に終わりました。これからもエルサルバドルの全域で皆さんがより美味しいコーヒーが飲める為、また国産コーヒーの需要拡大を図る為にコーヒー審議会が他の地域でもこの様な大会を開催出来ることを期待します。